第4回「つくる編スタート!みんなの畑づくり」レポート
あらゆるモノが簡単に手に入り、結果しか見えないことが多い時代。教育シーンでは、画一的な優等生教育より、「個の創造性」にさらなる関心が寄せられています。
自分の頭で考えるチカラと、それを実行するチカラ。これらは、ますます多様化する社会のなかで、子どもたちが自分の人生をより愉しむために、必要なチカラではないでしょうか。これらのチカラを楽しみながら育む場をつくれないか。
そんな思いから「コドモたちとみんなでつくる公園プロジェクト」が始動しました。舞台は、スマイルズが運営するファミリーレストラン「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」です。
2018年11月から始まったプロジェクトは「かんがえる、つくる、あそぶ」の3段階で進み、半年間は「かんがえる篇」として、コドモたちが自ら公園の設計図を考えるミニスクールを実施しました。
かんがえる篇の記事はこちら:https://100spoons.com/event/kidspark190415/
今日は「かんがえる篇」でつくった公園の設計を実際に形にしていく、公園を「つくる篇」がはじまります。
第1回目の今日は「みんなの畑づくりワークショップ」。公園の真ん中につくるみんなの畑では、野菜の苗を植えて、水をやって、収穫して、レストランの料理となって、みんなで分かちあう……自分の手を動かし、時間も手間もかかる取り組みですが、今日はいよいよ最初の一歩です!さっそく当日の様子をお届けします。
講師の小泉 清さんは、神奈川県秦野で農業を営んでいます。100本のスプーンのレストランメニューにも、小泉さんのつくったハーブや野菜が使われています。現在、約3000平米(100本のスプーン20個分)の広さの畑で、20種類の野菜をつくられています。
集まったコドモたちは、やや緊張気味の様子。まずは小泉さんから、畑に植える野菜やハーブの説明、農業の楽しさについてお話を聞きます。
ここで、今日植える苗が紹介されました。
「それ、見たことある」
「お家で育ててるよ」
実際に見る小さな苗に、いきいきとした声が響きます。イタリアンでお馴染みのバジルから珍しいハーブまで、小さな苗からは想像もできないほど、大きく伸びるものもあります。16種類のハーブとミニトマトを4グループで分けて植えていきます。
Aグループ:フェンネル、ダークオパールバジル、セルバチコ、パセリ、ミニトマト
100本のスプーンでも、よく使われる「フェンネル」や、おなじみの「パセリ」、家庭ではあまり使われない「セルバチコ」など。
Bグループ:チャーチル、レモンバジル、赤じそ、スペアミント、ミニトマト
レモンの香りが爽やかな「レモンバジル」や日本のハーブとも言える「赤じそ」は今、人気があるのだとか。
Cグループ:オレガノ、カモミール、シナモンバジル、タイム、ミニトマト
花がハーブティーになる「カモミール」や、肉・魚料理の匂い抑える「タイム」など。
Dグループ:ナスタチウム、イタリアンパセリ、スイートバジル、アマランサス、ワサビルッコラ、ミニトマト
「ナスタチウム」は花も葉も食べられて、ワサビのような爽やかな味がするそう。
「あ、いいにおい!」「見たことあるかも!」実際に手にとりながら、名前や特徴を覚えていきます。苗には太陽の光が当たるように、壁側から背の高い品種、手前には背の低い品種を植えていきます。ハーブのイラストが描かれたカードを並べて、グループごとに順番を確認していきます。
「カモミールは背が高いから、一番壁側だね」
「ミニトマトは収穫しやすように、どのグループも一番手前。」
畑で小泉さんからのレクチャーをコドモも大人も、真剣に聞き入ります。
次はいよいよ、みんなで苗を植えていきます。大人たちも初めて見るハーブの苗に「名前はなんだっけ!」となることもしばしば。「紫のバジルはAグループ〜!」とコドモと大人の、ハーブ植えがはじまります。
今日のために、小泉さんが畑用の定規を用意してくれました。定規の白いマークに沿って、苗のポットを置いていきます。コツは、等間隔に、風通しが良いように植えること。
畑の土は、水持ちの良い良質な土。「土のなかはちょっと冷たいよ!」と教えてくれました。
土を掘って、苗をポットからそっと出して、優しく土をかぶせます。
休憩を取りながら、どんどん植えていきます。数をこなすと、手際がよくなっていきます。
「けっこう慣れてきたよ」
「先に土を柔らかくするといいよ」
「スコップより手のほうが掘りやすいかも!」
アイデアを共有しながら苗を植えていく表情は、真剣そのもの。
12時前には、なんと700株以上の苗がレストラン前に植えられました。
「みんなの畑」は100本のスプーンのお店の正面、レストランの顔とも言える場所です。これから成長し、変化していく畑を見に、レストランに来る楽しみが増えそうです。
畑仕事を終えて、みんなで記念撮影。
そして、最後にお待ちかねのランチタイムです!
小泉さんのつくった野菜をつかった、100本のスプーンのシェフ特製ランチをみんなでいただきます!
「甘くておいしい!」と声があがったのは、小泉さんの育てたトマトです。サラダでそのまま、グリルして、ソースにして……野菜の個性を引き出すのは、100本のスプーン あざみ野ガーデンズのシェフたちです。
▲100本のスプーン あざみ野ガーデンズ 店長 岩田さん
二子玉川、東京都現代美術館、そしてあざみ野ガーデンズと3店舗ある100本のスプーンのレストランシェフはそれぞれ月に一度、小泉さんの畑に通っています。畑で小泉さんと話しながら野菜やハーブを見ていると、料理のアイデアをもらえるのだそう。
一方、小泉さんはシェフから「お客様が小泉さんの野菜、すごく感動されていましたよ。最近はきゅうりが人気です」という声をもらったとき、つくって終わりではない、野菜づくりの魅力があると語ります。
そして「野菜に色や形、大きさに個性があるように、同じレストランでもシェフの個性がある。特にハーブ選びはシェフによって好みが違うのが面白い。それぞれの個性が感じられて、楽しいですね」と続けます。
そんな小泉さんが農業を始められたのは55歳の時。団塊の世代に生まれ、サラリーマン人生のなかで、自分らしい表現や個性が評価されづらい環境に、違和感があったと言います。「寝ている間もため息ついてる、と奥さんに言われてね」と話す小泉さん。そして、退職を決意し、実家の畑を貰い受け、野菜づくりを始められました。
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「レストランで注文すれば、料理が運ばれてくる。スーパーに行けば完成した惣菜が並んでいる。結果だけが見えやすい今、身近な『食』を起点に、前後の過程を知ることで、料理がもっと美味しく感じられるかもしれませんね。」小泉さんは野菜をつくる立場から、公園プロジェクトの取り組みに共感を寄せます。
プロジェクトを率いる、スマイルズ レストラン事業部の宮川 大氏はこう語ります。
「みんながつくった野菜も、レストランでシェフが料理にして、お客様に届けたいと考えています。小泉さんが野菜づくりで感じる喜びを、みんなにも感じてもらえたら。」
苗を植え終わって、植えた人の名前を表札にしない理由を伺うと、宮川さんは「すごく悩んで、書かないことにしました。」と答えてくれました。そして、続けます。
「公園プロジェクトを通して、自分のものではなく、”みんなの”場をつくる経験になればと考えています。だから、あえて植えた人の名前を表札にしませんでした。100本のスプーンの公園を起点にして、自分のものと同じように、みんなのものを大切にする感性を育んでもらいたいんです。」
コドモたちがアイデアを夢想して終わり、というものではなく、アイデアを実現するために、実際に手を動かして公園を「つくる」ワークショップを重ね、さらに公園で遊ぶことで、みんなの居場所へと近づいていきます。
完成後は維持するだけでなく、繰り返し考えて、つくり続けていく「終わりのない公園づくり」が100本のスプーンの公園プロジェクトです。
畑の野菜が育っていくように、100本のスプーンの公園を起点に、じっくり時間をかけながら、感性を伸ばしていくきっかけを見つけに、遊びにいらしていくださいね。
そして、2019年の春から着々と公園の工事が進み、もうすぐ公園のシンボルとなるすべり台(世界一たのしい食卓)が出来上がります!
まだまだ公園づくりは続きますが、みんなが楽しみにしていたすべり台と小さな池をお披露目するパーティーを、7月20日(土)に開催予定です。
詳細は以下よりご確認ください!
https://azaminopark-0720.peatix.com/
文・撮影:名和 実咲