100本のスプーン

【コドモたちとつくる公園プロジェクト】

第2回「公園づくり計画の中間検討会」レポート

AZAMINO GARDENZ

ファミリーレストラン「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」で、2018年11月からコドモたちが建築家と一緒に公園をつくるプロジェクトがスタートしました。

「家族と行きたくなる公園」をテーマに、建築家・岡野道子氏のレクチャーのもと、公園のアイデアを考えます。第1回の「建築家と考える はじめての公園設計ワークショップ」ではコドモたちの夢とアイデアが詰まった、5つの模型が完成しました。

全3回のワークショップのうち、12月11日(火)に第2回目となる「中間検討会」が開催されました。

基本構想の提案を受けて、コドモ建築家たちがより具体的な公園の構想をディスカッションし、アイデアを発表します。

 

宮川(*1):こんばんは。今日はもう一回みんなでアイデアをブラッシュアップしていきましょう!前回みんなが考えてくれたアイデアを、オトナ建築家たちと私たちでぎゅっとまとめて、公園のベースをつくりました。大きな公園の模型を見てもらいながら「基本構想」を提案させていただきます。

会田(*2):ミュージアムエデュケーターの会田です。公園は何年もかけてつくっていくものです。みんなが大人になって改めて公園を見て何かを感じてくれたら嬉しいです。3月には公園の計画のお披露目会を行います。記者会見のようなスタイルで発表することも想定して、今日は考えていきましょう!

 


公園の基本構想は「自由な遊び」と「自然」がキーワード

一ヶ月ぶりのお友だちとの再会に、コドモ建築家の明るい声が弾むレストラン。建築家の岡野道子さん(*3)がつくった模型を囲んで説明を聞きはじめると、キリリと大人びた表情に。

まずは岡野さんより、初回ワークショップのアイデアを模型に落とし込んだ、公園の「基本構想」が発表されます。

岡野:前回はみんなから「かけっこしたい」「坂をすべりたい」「寝転がったりしたい」など、たくさんの意見が出ました。公園全体をつかっていろんな動きや遊びができる場所にできたらいいな、と考えてこんなものを用意してきました。

模型に公園のモジュールをひとつひとつ置きながらなされる岡野さんの説明は、まさに公園がみるみる作られていく様子を想像させます。

大きなスプーンのような一枚の板。くぼんでいたり、山があったり、太いところと細いところがあります。板が置かれると……

岡野:坂をのぼったり、くぼみに水を貯めて魚釣りをしてもいいですね。椿の花が咲く頃には花びらを浮かべても綺麗です。「人造石の研ぎ出し」という素材は走ったり寝転がったりするとツルツルとして気持ち良いんですよ。

岡野:身体を動かすだけではなく、「空を見上げたい」「四季を楽しみたい」という意見がたくさん出ていました。この公園にとって、自然は大切なキーワードですね。

でも、今の公園は土だから、雨が降ったらドロンコになってしまいます。

「土砂崩れになっちゃう!」

「草生えてたらいいなぁ」

「芝生とか、花畑だったらいいな」

岡野:そのとおり。そこで、シロツメクサの草原をつくるのはどうかな?シロツメクサは、寝転がっても柔らかいし、芝生よりもじょうぶで枯れにくいんですよ。

続いてバラのアーチのトンネルが配置されると、「きれい!」「いっぱいつくりたい!」と盛り上がるコドモ建築家たち。基本構想も色どり豊かになりました。

バラアーチは、「トンネルをつくりたい」という意見と「自然」のキーワードをかけ合わせた提案。もっこうバラというつる性でトゲのないバラの品種なら、みんなで植えて、育てて、くぐって遊ぶことができます。

階段の両側には、アジサイがたくさん咲いています。雨の日でも楽しめますし、四季の移ろいを逃しません。

続いて敷地の奥にドングリのなる木を植えた「冒険の森」の構想が発表されます。カブトムシのすみかにもなる森で、虫取りや虫の観察がしたい!とはやくも夏休みの楽しみが増えたようです。

岡野:ドングリの木だけじゃなくて、果物のなる木を植えて、みんなで収穫するのはどうかな?前回「キッチンで何かつくってほしい」というアイデアが素敵だなと思いました。

みんなで収穫して、ジャムづくりをするのもいいですね。ヒメリンゴや、びわ、みかん、柿はとっても育てやすいんですよ。

岡野さんから説明された公園の基本構想

公園模型の中をGo proのカメラで見てみると、まるで自分が公園で遊んでいるような臨場感があります。「バラのアーチくぐって〜!」「女の子がいる〜!」と、コドモ建築家たちもすっかり模型の公園で、想像力が刺激されたようです。

岡野:実際に公園を作りはじめるのは4月末から5月の予定です。みんなで木を選んだり、お花を植えたり、ベンチをつくったりするんですよ。

次のディスカッションで、みんながやりたかったことを「どこで、どんな風に実現するのか」を考えていきましょう!

 

アイデアを洗練させていく、ディスカッションタイム

ここからは、30分のディスカッションタイム。4人一組、10分ごとにメンバーを変えながら、たくさんのお友だちと話し合う「ワールド・カフェ」というワークショップ形式で、3回のディスカッションが行われました。

「トンネルとアーチをつなげたら楽しい!」

「大きなブランコで、すっごく速いのがいいな」

「私が考えてた池、なくなっちゃった〜」

コドモ建築家たちからどんどん、アイデアがでてきます。テーブルにはさきほどの公園の基本設計図が置かれ、そこには新しいアイデアが書き込まれていきます。みんなの意見を聞いてメモをとったり、イメージをお友だちに伝えるために絵を描いて見せているコドモ建築家の姿も。

「この坂をのぼって、橋を渡って、滑り台でおりるよ!」

具体的な遊び方を、臨場感のある言葉でお友だちに説明します。聞いているだけで一緒に遊んでいるような、ワクワク感が伝わってくるようです。

お友だちの意見をじっくり聞いたり、お友だちのアイデアから新しい遊びを思いついたり、あっという間に30分のディスカッションタイムが過ぎてゆきます。

 

一人一案、一番大切なアイデアを発表

最後に一人一案、一番大切なアイデアや、お友だちに発表して反応が良かった意見を発表します。

「鳥かごを大きな木につくって、育てたい」

「2つの秘密基地をつなぐ橋をつくる」

「茂みの森のマスコットキャラクターをつくって一緒に記念撮影ができる」

「入り口に公園の地図を置きたい」

中には「川がいい、という意見が多かったから、賛成です」といった、お友だちの意見を応援するコドモ建築家も。みんなの前に出て話すのは緊張するけれど、それぞれ一番大切な公園のアイデアを伝えることができました。

ワークショップの最後にオトナ建築家である岡野さん、会田さんからの講評です。

岡野:初回はいろんなアイデアが出ていて、作れるか難しいなと思うこともありました。でも、今日のみんなのアイデアは実現できそうだと感じます。

ディスカッションが進むと、春夏秋冬や野菜、鳥の巣など、いいキーワードが聞こえてきました。3月までにみんなのアイデアを公園にできるよう準備を進めますので、みなさんは自分のアイデアを覚えていてくださいね。

 

会田:これから冬休み。旅行やお出かけをした時にぜひ公園を観察してみてください。他の子どもたちが何に一番楽しく遊んでるかを観察してみましょう。いろいろな気づきがありますよ。

 

建築家たちのあたたかな晩餐会

最後はオトナ建築家とコドモ建築家たちでテーブルを囲んで親睦を深める「晩餐会」の開催です。たくさん考えて話して、お腹もペコペコな建築家たち。シェフが腕によりをかけてつくったディナーがいっそうおいしく感じられますね。

「公園でお友達とこしょこしょ話がしたいな」

「鳥かごは、本当は100個つくりたいの!」

ディナー中も、コドモ建築家たちは最後の発表で伝えきれなかった公園のアイデアについて話し合っていました。

 


かんがえる篇 第二回 オトナ建築家たちのふり返り

岡野さん:今回は私たちの予想を超えるアイデアがたくさんできてきました。しかも初回よりも具体的でリアリティのある意見で、実現できそうな意見も多く出ていました。大人向けにつくったのですが、基本構想の土台があったのが大きかったと思います。11月の公園実地調査の時の体験と、カメラ視点での体験が重なって、リアリティが出てきたんだと思います。

『グラグラ橋とか滑り台も速くて楽しい!』とか『坂を登って、滑り台でビューンと降りる』といった時間の流れごとアイデアにしていたのですが、立体的で、かつ時間の流れの4次元の発想がいいですね。

遊びを通した感覚や、形容詞が豊富で印象的でした。ロジックではなく、フィジカルに基づいたアイデアはこんなにも刺激的なんだと大人ながらに関心しました。大人になると客観的に頭で考えてしまいがちで、本当は身体感覚や直感でこうだ!というアイデアが大切です。オトナ建築家も学びが多かったのでは。

 

会田さん:前回は外から見た遊び場だったのですが、今回は中から見ていたから、どう遊ぶかの具体的な活動をもとにしたアイデアでしたね。カメラを使って中から見るのが子どもたちの想像力に効いていたのかもしれません。

子どもたちの中で、より解像度が高くなったんだと思います。最初はこれをやって、それからこうしてという時間の経過も含めてリアルに考えることができていました。

さらに100本のスプーンの公園には斜面があるのがポイント。斜面があると風景の見え方に変化があって、視線の高さも違う。子どもたちは一人称視点で考えているからこそ、面白いアイデアがどんどん出てくる。むしろプロの建築家もそうあるべきで、自分の身体を使って引力とどう戯れるのか、スピード感はどうか、もっと注意深く見ていきたいですね。

宮川さん:今回も、子どもたちが公園でやりたいことをたくさん発表してくれました。周囲の意見を聞いたり、譲ったり、社会性のあるディスカッションでしたね。子どもたちがお互いの存在を意識しながら合意形成していく様子を、話し合いに参加しながら近くで感じることができました。

最初はもっとカオスになってしまうのかと心配していたのですが、大人の心配もなんのその。我々も子どもたちとディスカッションすることで、たくさんの気づきをもらいました。

子どもたちの意見を、大人として実現してあげたいなと思いますね。このプロジェクトの成功は、自分の夢や妄想が実現した!と子どもたちが実感できるかどうかにかかっていると思います。


ワークショップを重ねるごとに、みんなの夢が少しずつ形になっていく100本のスプーンの「コドモたちとみんなでつくる公園プロジェクト」。オトナもコドモも、ここにしかないはじ初めてのワクワクする瞬間をたくさん見つけることができました。

ここから、コドモ建築家たちのアイデアをもとに、実際の公園の設計に入っていきます。次回はかんがえる篇第三回、3月10日(火)の「公園づくり計画のお披露目会」です。コドモ建築家たちの記者発表のようなお披露目会。ぜひこちらもお楽しみに。

文・撮影:名和 実咲

 

*1:宮川 大  Dai Miyagawa
レストラン事業部 企画戦略室

1991年生まれ。大学在学中より、「東の食の会」などで食関係のインターンを経験。2014年4月、新卒で㈱スマイルズ入社。生活価値拡充研究所、クリエイティブ本部を経て、レストラン事業部に配属。2年間ほど100本のスプーンあざみ野ガーデンズにて勤務したのち、2018年より現職。

*2:会田 大也  Daiya Aida
ミュージアムエデュケーター

東京芸術大学大学院映像研究科映像メディア学専攻在学。 山口情報芸術センター[YCAM]にて2003年の開館より11年間、チーフエデュケーターとして教育普及を担当。メディアリテラシー教育、美術教育、地域プロジェクトの分野で、オリジナルのワークショップを開発。一連のオリジナルメディアワークショップにてキッズデザイン大賞受賞。担当した企画展示「コロガル公園シリーズ」は、文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン賞などを受賞。その他、(株)三越伊勢丹やVIVITA株式会社、(株)Mistletoeなどといった企業とも協働し、教育プログラムの開発や運営に携わる。

*3:岡野 道子 Michiko Okano
建築家/芝浦工業大学特任准教授 / 岡野道子建築設計事務所代表

2005~2015年伊東豊雄建築設計事務所勤務。「宮城学院女子大学付属認定こども園森のこども園」の他、劇場や美術館、オフィス、火葬場、みんなの家など担当。2016年に岡野道子建築設計事務所を設立、主な作品は「檸檬ホテル」や「熊本益城町みんなの家」。2017年より芝浦工業大学建築学部特任准教授。現在、「甲佐地区災害公営住宅」、「甲佐町子育て支援住宅」等が建設中。大学では三重の漁村での地域の交流拠点づくりのプロジェクトも進行中。