100本のスプーン

【コドモたちとつくる公園プロジェクト】

第1回「はじめての公園設計ワークショップ」レポート

AZAMINO GARDENS

ファミリーレストラン「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」で、2018年11月からコドモたちが建築家と一緒に公園をつくるプロジェクトがスタートしました。まずは、子どもたちが「家族と行きたくなる公園」をテーマに、建築家 岡野道子氏のレクチャーのもと、全3回にわたるフィールドワークやグループワークをしながら公園のアイデアを考えます。その第1回目のワークショップの模様をご紹介します。

プロジェクトは大きく分けて「かんがえる篇」「つくる篇」「あそぶ篇」の3つに分かれます。今回はその最初にあたる「かんがえる篇」第一回目のワークショップ。


集まったのは、25名のコドモ建築家たち

11月4日(日)。いよいよプロジェクトがスタートするこの日、「100本のスプーン あざみ野ガーデンズ」には小学1年生から6年生までの25名のコドモ建築家が集まりました。

「100本のスプーン」の宮川の挨拶でワークショップは始まります。

宮川:「100本のスプーンでは、コドモたちにはじめての体験、思い出に残る体験を提供したいと思っています。その思いの延長線上で、コドモたちと公園をつくることを思いつきました。公園は作って終わりではなく、たくさんの人の遊び場になります。みんなが大人になったときにもここに公園があって、みんなに家族ができたとして“この公園はお父さんが作ったんだよ!”なんて言う日が来るかもしれません。そんな場所をみなさんとつくっていくことが本当に楽しみです」

 

建築家からのレクチャー「家族やお友達と行きたくなる公園ってどんな公園?」

少しの緊張に期待感を混ぜた表情のコドモたちの前に登場したのは、建築家の岡野道子さん(*1)。オトナ建築家として、これからコドモたちといっしょに公園をつくっていきます。まずは岡野さんの建築レクチャーを受けます。

岡野さん:「世界にはいろんな公園があります。でもその多くは大人が考えた遊び方を提供したもの。これからつくる公園は、コドモ達みんなが遊び方を自由に考えて、実際にみんなでつくりあげます。家族やみんなが来たくなる公園を考えていきましょう!」

岡野さんが紹介するのは、世界中にあるいろんな形の公園の写真たち。昔からその土地にある木を遊具にしている公園、オトナが遊びを考えるように仕事をするツリーハウスなど、それを見たコドモたちは「これも公園なの!?」と首をかしげたり「なんだこれ?」と写真をじっと見つめていたりしています。

いろんな公園の形があると知ったところで、まずはそれぞれが考えてきた公園のイメージを順番に発表します。

 

「公園で冒険がしたい! そのためにアスレチックをつくりたい!」

「トランポリンで、大きなジャンプがしたい!」

「大きな花飾りをつくりたいから、きれいなお花がたくさんあるといいなあ。」

建築家さながら、公園の敷地を調査!

それぞれが真剣に考えてきた公園の案。ここから実現に向けてさらにイメージを膨らませるため、次は実際に公園となる敷地へフィールドワークに出かけます。

 

「この木は3メートル以上あるよー!」

「敷地の幅は22メートルだね!」

 

この日はあいにくの小雨でしたが、コドモたちは敷地内を元気よく歩き回ります。メジャーを持ちながら敷地の幅を計測したり、16段の急な階段を登った先で自分の身長よりも大きい草むらを見つけたり、敷地を見たことでより具体的なイメージが湧いた様子。

5つのチームに分かれて、公園のイメージを深め、カタチにしていく

室内に戻ってからは、5つのチームに分かれて話し合い。この日は、建築を学ぶ芝浦工業大学の学生のみなさんが各チームに入ってサポートしてくれます。つくりたい公園の案と自分の足で歩いた敷地のイメージを合わせて、今度は他者との関係性も意識すべく “誰と何をして”楽しむ公園をつくりたいかのアイデアを出します。

 

「階段の奥にネットを張ったら、お父さんや兄弟と野球もゴルフも練習できるよ。」

「家族でお花のアクセサリーを作りたいな。」

「あの茂みは迷路にできる!友達みんなと森の迷路で冒険だ!」

アイデアを話し合ってまとめたら、公園のイメージをより具体化するために、公園の模型を作っていきます。

 

65cm×55cmでつくられた模型の土台横に並ぶのは、実際の建築模型でも使われる植栽用のカスミ草や色とりどりのスポンジ、バルサなどのマテリアル。プロと同じものが使えること、“ホンモノ“に触れられるのも良い経験です。

1/50の大きさの模型。公園の敷地の広さや起伏が表現されています。

 

コドモたちの全身写真を使った人物模型もあり、この公園で自分が遊ぶとしたら…の妄想もさらに広がります。

 

 

仲間が作った模型を見て「じゃあここはこうしよう」と数珠つなぎにアイデアがつながっていく様子も見られました。仲間で考えることで、ひとりでは思いつかないアイデアが思いついたり、公園のイメージがぐっと広がったり。途中、趣向を凝らした仕掛けに保護者席から「オトナには思いつかないなあ」と驚きの声が上がることも。

 

シェフ特製のシュークリームでデザートタイム。

コドモたちの夢とアイデアが詰まった、5つの模型が完成!

 

じっくり作業をすること、約1時間! それぞれのチームの模型が完成しました。最後はみんなの前でそれぞれのチームが公園のコンセプトとみんなで作った模型の発表です。

Aチーム:お友達や家族と自然の中で楽しくなれる

「家族で遊べる草むら、たくさんの木の上では空を見上げるスペース、たくさんのお花畑をつくりました。坂の上からはじまる筒型のすべり台を抜けると、お店の正面に到着!」

Bチーム:自然を楽しむすべり台

「季節を楽しみたい、空を見上げたい……そんな思いを組み合わせてお店の屋上から始まるすべり台が中心の公園を考えました。秘密基地や釣りができる場所もあって、いろんな遊びが楽しめます。」

Cチーム:楽しくなぞめき公園

「迷路がある不思議な空間と太陽の光を感じる明るい空間をトンネルがつなぎます!ちがう世界を行き来できる公園。高い木を使ったターザンロープ、屋根がトランポリンになった日よけ。みんなの意見を組み合わせました!」

Dチーム:水で遊べる公園

「高低差を利用した、水遊びができる公園です。川の起点にはツリーハウスを作ったり、水が溜まる池には飛び石があったり、水辺を楽しめます。」

Eチーム:あざみ野 冒険の森

「友達と冒険がしたいので、ぐらぐら揺れる橋や宝探しができる壊れた海賊船、ロッククライミング場などワクワクが詰まった場所がたくさんの公園にしました!坂のふもとのキッチンでは料理もできます!」

すべてのチームの発表が終わったところで、第一回「建築家と考えるはじめての公園設計ワークショップ」は終了です。

 

ワークショップ終了後、コドモたちに話を聞くと「みんなと意見をまぜていったのが楽しかった!みんなでやるとアイデアは無限大だなと思った」という声や「みんなと作るのが楽しかった!」「実際の場所を見てつくりたいものが変わった。」など、学校とは少し違う環境でのワークショップにたくさんのことを感じていた様子でした。

 

建築家の岡野道子さんはどんどんと変化するコドモたちのアイデアに驚いたと話します。

岡野さん:「実際に敷地を見たとき、インスピレーションが湧いている感じがしましたね。それに仲間の発言にもどんどん反応していて、しりとりのように次々とアイデアが繋がっていったのも印象的。変なこだわりもないから他の人の話を聞いて自分の意見をどんどん変える。より良いものをつくるための発想がすごく自由なんですよね」

 

また、プロジェクト全体を監修するのはミュージアムエデュケーターの会田大也さん(*2)。このプロジェクトを通してコドモたちが遊びながら新たな学びを得られるだろうと話します。

会田さん:「僕はミュージアムエデュケーションという、美術館での教育普及の仕事を11年以上やっていますが、最近は「プロジェクト型学習」と呼ばれる、実際のプロジェクトを通して、様々なことを学んでいくという学習法が認知されてきています。今回のプロジェクトはいわゆる習い事のような一方通行の学びではなくて、コドモ自身が自ら何かを発見したり、つかみとったりできるような学びのスタイルを重視しています」

会田さん:「今回は”遊びながら考え、考えながら遊ぶ”というふたつを行ったり来たりしながら進めていこうと思っています。ふわふわのアイデアからどんどん具体的に作られていくことで『自分たちが作ったぞ』という実感と主体性が長期的に作られます。そうすることでコドモたちにとって、ここが文字通り”自分の庭、自分の公園”になるんです。このオーナーシップを醸成する遊びと学びの場作りが重要です」

 

かんがえる篇、2回目のワークショップは約1ヶ月後。コドモ建築家たちがそれぞれに考えた公園をオトナ建築家の岡野さんがまとめてひとつの公園のイメージを提示します。その公園のアイデアをコドモたちとさらにディスカッションしながら、公園の設計図をみんなでまとめていく流れです。

今はまだ何もない土地ですが、コドモ建築家の構想はすでに動き始めていて、コドモもオトナも、まだ見ぬ未来にワクワクしています。

 

文:友井 翔菜

撮影:小川 涼子(100本のスプーン)

*1:岡野 道子 Michiko Okano
建築家/芝浦工業大学特任准教授 / 岡野道子建築設計事務所代表

2005~2015年伊東豊雄建築設計事務所勤務。「宮城学院女子大学付属認定こども園森のこども園」の他、劇場や美術館、オフィス、火葬場、みんなの家など担当。2016年に岡野道子建築設計事務所を設立、主な作品は「檸檬ホテル」や「熊本益城町みんなの家」。2017年より芝浦工業大学建築学部特任准教授。現在、「甲佐地区災害公営住宅」、「甲佐町子育て支援住宅」等が建設中。大学では三重の漁村での地域の交流拠点づくりのプロジェクトも進行中。

*2:会田 大也  Daiya Aida
ミュージアムエデュケーター

東京芸術大学大学院映像研究科映像メディア学専攻在学。 山口情報芸術センター[YCAM]にて2003年の開館より11年間、チーフエデュケーターとして教育普及を担当。メディアリテラシー教育、美術教育、地域プロジェクトの分野で、オリジナルのワークショップを開発。一連のオリジナルメディアワークショップにてキッズデザイン大賞受賞。担当した企画展示「コロガル公園シリーズ」は、文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン賞などを受賞。その他、(株)三越伊勢丹やVIVITA株式会社、(株)Mistletoeなどといった企業とも協働し、教育プログラムの開発や運営に携わる。