【後編】「あざみ野 チアアッププロジェクト」レポート
Phase3:「つくる/あそぶ」篇
前編では子どもたちから2回のプレゼンテーションを受け、100本のスプーンのメンバーが各チームにジョインするところまでお伝えしました。子どもたちの自主的な活動もはじまり、お店には確実に新たな活気が生まれていきます。
2020年12月7日
ここで、コツコツと草むしりをつづけてくれた「グリーンクリエイター」と「スプーンファーマーズ」はひとつの目標を成し遂げます。前回の公園プロジェクトにも参加してくださった100本のスプーン契約農家の小泉さんのご協力により、キレイになった畑にお花の苗と野菜の種を植えることができたのです!
小泉さんからレクチャーを受けるメンバー。
土にくぼみをつけて、野菜の種を植えていきます。大変だった目印の設置(緑色の棒)も、雨の土日にみんなで頑張りました…!
小泉さん、いつも本当にありがとうございます。作業のあとは、育て方や気をつけることなどプロならではのお話が聞けて、子どもたちもより一層やる気が出たようでした。
他のチームもコツコツと話し合いを進めていきます。開店前の客席が会議室です。(AM9:00)
2020年 12月22日
私たちは悩んでいました。活動を進め、モノづくりを目指す「遊び研究所」や「ハッピーDIY」チームがアイデアをどんどん出してくれる中、「コドモの自由な発想を、育む」(公園プロジェクト3つの特徴より)という理想と現実の狭間で。
そう。偶然の出会いとときめきからはじまったこのプロジェクト、どこにも予算は無いのです。
子どもたちには自由に発想を広げてほしい一方で、100本のスプーンとしてのブランドの作品性の担保や製作コストの捻出、その費用対効果、ついついオトナの都合が頭をよぎります。
私たちは一度皆に、「お金の話」の授業をしようと決めました。
ブランドマネージャーの宮川から、売上や利益、原価などの話を交えて本格的に授業を行います。
今、みんなが企画しているモノたちを作ろうと思ったら、どれくらいのお客さまに来てもらい、どれくらいのお金を稼がなくてはならないのか…?リアルな数字を伝えていきます。
「どう?できそうかな?」の問いかけに、
「無理ー!」「できるかも!」「おれの貯金より全然多いや…」など、感想を口にする子どもたち。
難解な部分が多かったと思いますが、「何か企画を実行しようとしたら、お金がかかる。(工夫次第でかかるお金を減らすこともできる。)そして、お金を稼ぐのは思っていたよりもずっと大変そうだ。」ということは、子どもたちの心に強く残ったようでした。
2021年 1月15日
新年を迎え、再度新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい緊急事態宣言が発動されてしまいました。
対面で活動する予定だった私たちも急遽取り止め、この日はオンラインでミーティングを行います。直接会えたら何よりですが、画面越しでもお互いの顔が見れて、元気が出てきました。子どもたちも笑顔で嬉しそうです。いい時代になったものですね。(これ以降の店舗での活動はほとんど屋外で行われました。懐かしい「青空教室」というわけです…!)
2021年 1月25日
この日は待ちに待った、「チアアップクッキング」チームの「試食会」が行われました!メンバーが提案したメニューを、100本のスプーン AZAMINOの川下シェフが腕をふるい、お客さま。小学校にたくさんのアンケートを配って、集計して、料理を調べて、みんなで考えて。たどり着いた初めての「試食会」に、子どもたちは終始興奮気味です。
武田店長も嬉しそうです。ここまで、あたたかくチームを見守りならがサポートしてきました。
シェフに質問したいことがたくさん!
おいしさのあまり、ため息交じりに「今日死んでもいい…」なんてつぶやく子も!
子どもたちに優しく寄り添いながら、メニュー開発の指揮を取るシェフの川下。
「遊び研究所」と「ハッピーDIY」チームも、ブランドマネージャー宮川から受けた「お金の授業」を念頭に、つくるものを決定していきます。
「三角窓の秘密基地」「手づくり丸盤オセロ」「丘の上のブランコ」…果たしてどんな仕上がりになるでしょうか。お金はなくても、知恵と努力でカバーです!
2021年2月8日
活動もいよいよ残り1ヶ月。大詰めとなってきました。ここから100本のスプーンスタッフは、「最終成果物」の制作も本格化。(各チームの活動に加え、開発したメニュー&活動報告の冊子、Web記事の執筆、対談記事の企画、動画制作準備など…。)子どもたちのパワーに負けないよう、力を振り絞って頑張ります。
途中から「ちいさな動物オブジェ」をつくることに決め、奮闘してきた「ハッピーDIY」チーム。公園に設置して、探して見つけて楽しんでもらいたい気持ちで精一杯制作を続けます。
モノづくりのプロだからこそ出来る、デザイナー北山の本格的な指導。よりリアルな動物をつくるため、図鑑での観察や制作前のスケッチを宿題にしていました。振り返れば、北山は子どもたちとたくさんの対話を重ねてきました。子どもたちにとっては初めて聞いたであろう「パブリック・アート」の話や、モノづくりの素材の知識など…。
先日、子どもたちがこっそりと「本当にデザイナーなんですか?」と聞いてきたそうです。日常生活でデザイナーさんに会うなんて、なかなかないですもんね。これも今回のプロジェクトの醍醐味です。
「チアアップクッキング」チームも新メニュー開始に向けてラストスパート!値段やメニュー名についてシェフと話し合いです。試食会のあとから、サービススタッフだけでなくシェフに会いにお店に来る子も増えました。自分たちが考えたメニューをおいしい料理に仕上げてくれたシェフのファンになってしまったのでしょうか。
「遊び研究所」の制作もどんどん進行中!頑張れ!
冬に植えてしまったので思うようにお花と野菜が育たなかった「グリーンクリエイター」と「スプーンファーマーズ」ですが、植えてから2ヶ月間、みんなで分担して、きちんと水やりと観察日記を継続してくれています。放課後には、またまた草むしりしてくれたり、間引きしたお花で可愛いブーケを作ってくれたり。いつもありがとう。
2021年 2月25日 / 3月10日
この期間は各チーム最終成果物のラストスパートと、活動をまとめる動画用の撮影を行いました。当初保護者の方たちに来てもらう予定だったお店での「大きな参観日」企画も緊急事態宣言の延長に伴い叶わず。そこで、急遽、動画を制作することに決めました。プロジェクトの様子をもっと保護者の方たちに知ってもらいたい!そして、街の人びとや、100本のスプーンに興味を持ってくださる皆さまにも!そんな思いで突き進み、急ピッチで「絵コンテ」と「台本」を作成。(それを受け取った子どもたちは「芸能人みたい!」と喜んでくれたそう。)子どもたちもタイトなスケジュールの中、動画撮影の練習に励みます。ドキドキして撮影に臨んだ私たちに、ハキハキと堂々とセリフを読み上げ、嬉しい驚きをくれました。
そして出来上がったのが、こちらの動画です!各チームの活動経緯と最終成果物について、子どもたち自身のナレーションで語っています。ぜひご覧ください。
2021年3月17日
いよいよ、活動最終日となりました。ここまでやってこれて良かった!という充実感と同時に、こうしてみんなで集まるのは最後だと思うと、寂しい気持ちが込み上げます。
いつもどおり元気いっぱいの子どもたち。
まずは、みんなで完成した動画を鑑賞します。改めて、振り返るといろんなことがありました。この日々のことをいつか忘れてしまうかもしれないけれど、いつでも思い出せるように、記録に残すことができて本当に良かったです。
次は、一人ひとり(オトナもコドモも!)「チアアップ宣言」を発表していきます。このプロジェクトを通して学んだことを活かし、「今日からこんなことを大切にしていきたい!」「これからこんな人になりたい!」という新たな決意の宣言です。子どもたちが書いてくれた振り返りの作文から着想しました。(作文の一部抜粋はインタビューページからご覧いただけます。)
発表と同時に、一人ひとりの写真撮影もしていきます。少し先の未来、大きくなった子どもたちと一緒に見返して、思い出話に花を咲かせたいですね。
もちろん、オトナメンバーも発表と撮影に参加!子どもたちより緊張しているかも?
活動の途中、緊急事態宣言の発令などでなかなか会えなかった小泉さんも来てくださいました。4月からの「みんなの畑」での活動宣言をしてくれました!
最後にみんなで記念写真をパシャリ!
そして、無事に刷り上がった活動紹介の冊子(「チアアップクッキング」チームが開発した「給食リトルビッグプレート」メニュー説明にもなっています。)を大切に持って帰ります。
3/15から配布されているこちらの冊子と、販売開始した「給食リトルビッグプレート」、お店のお客様たちにも大好評です!
全員の努力が実を結びました。パパにもママにも、おじいちゃんにもおばあちゃんにもご近所さんにも、みんなに自慢してほしいと思います。春休みは家族と一緒に100本のスプーンに、「給食リトルビッグプレート」を食べに来るのが楽しみですね。
「ばいばーい!またね!」
100本のスプーンメンバーみんなで手を振って子どもたちを見送ります。
「本当にありがとう!これからも、いつでもお店に遊びに来てね!! 」
そんなわけで、とてもここには書ききれないほどの試行錯誤や紆余曲折を経て、無事に私たちの「チアアッププロジェクト」は(一旦)幕を下ろすことができました。
振り返って思うのは、私たちのプロジェクトではこれまで「かんがえる→つくる→あそぶ」を一直線の図として表していましたが、それは決して一方向に進むものではなくて、輪のように循環しているものだったのだなあ、ということです。ぐるぐる同じところを回っているようで、実は螺旋階段のように少しずつ 少しずつ上昇している…。そんなイメージに変わってきました。
ダメ出しされても失敗してもめげずに突き進む元気いっぱいのコドモたちと共に過ごしてきて、私たちオトナにも色々な変化があったのかもしれません。否、「変化を厭わない気持ちが生まれた」ということでしょうか。一度出した結論に拘りすぎることなく、柔軟に軽やかに変わりながら生きていく。
かんがえるチカラと、やってみるチカラ。
考えて、やってみて、ダメでもまた考えて、やってみて…。どんなに小さくても、失敗してがっかりしても。手触り感のある、自分ごととしての経験を積み重ねていくことで、この大切な生きるチカラは段々と身についていくのかもしれません。
以前に自分たちで提示した、「100本のスプーンが公園づくりを、コドモたちと一緒にやる理由。」が反芻されます。今回のプロジェクトで、ここで述べたことを痛感したのは、他でもない我々オトナたちだったような気がします。
何かを教えているようでいて、教えてもらっている。
与えているようでいて、与えられている。
つくってあげているようでいて、つくってもらっている。
本当に、オトナもコドモも一緒になって、一生懸命に走り抜けた充実した日々でした。私たち 100本のスプーンはこれからも、コドモたちとともに「みんなの公園」をつくりつづけようと思います。
100本のスプーンが公園づくりを、コドモたちと一緒にやる理由。
自分の頭で考えるチカラと、それを実行するチカラ。
これらは、これからますます多様化する社会のなかで、
子どもたちが自分の人生をより愉しむために、必要なチカラではないでしょうか。
これらのチカラを楽しみながら育む場をつくれないか。
そんな想いから、本プロジェクトは生まれました。
自分のアタマで考えて、自分の手で、手間暇をかけてつくる。
アイデアを夢想して終わりではなく、自分のアイデアがカタチになる喜びを子どもたちに感じてもらいたい。
そうして何かに夢中になれた経験は、その子たちの原体験として未来につながっていくかもしれません。
あらゆるモノが手に入りやすくなる時代のなかで、結果しか見えないことが多いように感じます。
しかし、モノがつくられる背景には様々なストーリーがあり、その過程は時間も手間もかかるもの。
背景を深く知ること、そこに少しだけ加担して関係性が生まれることで、
自分の周りがちょっとだけ豊かになったり、その背景を想像する気持ちが芽生えるかもしれません。
公園をつくるという唯一の体験を通して、楽しみながらも、毎回小さな発見と学びがある。
そんな時間を子どもたちとともに過ごしていきたいと考えています。